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全国のサラリーマンにうつ病バブルの到来

抗うつ剤が日本で爆発的に売れるようになったのは、新型抗うつ剤SSRIが本格的に上陸し始めた2000年以降で、それまで170億円程度だった市場は2007年には900億円を超える市場に成長している。

特に2000年に販売を始めたパキシルはその嚆矢となった薬剤だが、販売元のグラクソ・スミス・クライン社(以下GSK)の日本でのマーケティング戦略が近頃発売された「クレイジー・ライク・アメリカ」(紀伊國屋書店)という本で明らかにされており、衝撃的な内容だ。


同社のマーケティングはそれまで精神的苦悩をヘルスケア(医療)の問題とされていなかった国に、どうやって根付かせるか、というところから始まる。

アメリカで承認されて12年にもなるSSRI「プロザック」を販売していたイーライ・リリィ社が1990年代に日本への進出をあきらめているが、その理由は広報がWSJに語った通り、「日本人のうつ病観が欧米人のそれとは根本的に異なるために、日本にはこの病気に関わる薬を望む患者はそう多くないだろう。」といったものだった。

リリィの見立ては誤っていた。
というより、もっと徹底的にすべきだった。

GSKは文字通りこの新しい市場を掘り起こした。

「クレイジー・ライク・アメリカ」の「メガ・マーケット化する日本のうつ病」の章の紙数の大半は、2000年に京都で行われた世界の精神医学界の重鎮と日本の精神医療関係者を集めた大接待会議の描写に費やされている。

招待された精神科医学博士、カナダのマギル大学のローレンス・カーマイヤーの回想と議事録からあぶりだされるこの会議の内容はとても興味深い。

GSKの戦略はとても周到で理にかなっている。

まず、一般的な日本人の抑うつに対する認識に深く精通する必要があるので、日本人の自殺の一般例やうつを表現する言葉づかい、その「説明モデル」を検討する。

次に、日本の精神医学界の当時の状況、重篤な精神疾患しか診療対象になっていない状況に対してうつ病の診断マニュアル(DSM)を積極的に導入することで、気分障害関連への関心を引き寄せる。

最後に販売促進。

うつ病が一般的で当たり前な疾患であるというイメージを広めるために有名な女優を配した広告に注力し、「うつは心の風邪」という表現を多用することで、受診の敷居を低くする。

(2014年02月23日 BLOGOSより抜粋)
http://blogos.com/article/80922/


【関連書籍】
クレイジー・ライク・アメリカ: 心の病はいかに輸出されたか
抗うつ薬の功罪―SSRI論争と訴訟

| 精神科 | 16:33 | comments(-) | trackbacks(-) | TOP↑

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